【特別コラム】近代という「神話」の終焉(3)
人間がつくりあげた虚構の「国民国家」

執筆者:内山節 2022年1月2日
タグ: 日本
エリア: アジア ヨーロッパ
 

 

 近代的世界は、3つのシステムが相互補完的な関係を結ぶことによって生まれたといってもよい。「国民国家」「市民社会」「資本主義」というシステムである。

 国民国家は、それまでは地域共同体や職人共同体などに属して暮らしていた人間を、国民という個人に分解し、その国民を国家が一元管理するかたちとしてつくりだされた。

 日本をみても、江戸時代までの人々に“日本人”という意識はなく、たとえば“津軽の○○村の人”や“薩摩の○○村の人”であったのが、明治になると日本人がつくられ、日本国民を国家が一元管理するかたちが生まれたように、である。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
内山節(うちやまたかし) 哲学者。1950年、東京生まれ。群馬県上野村と東京を往復しながら暮らしている。著書に『「里」という思想』(新潮選書)、『新・幸福論』(新潮選書)、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』(講談社現代新書)、『修験道という生き方』(共著、新潮選書)、『いのちの場所』(岩波書店)、『内山節著作集』(全15巻、農山漁村文化協会)など多数。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top