西村 本日のForesight×新潮講座セミナーは「米中産業冷戦」時代のアジアビジネスをテーマに、亜細亜大学都市創造学部の後藤康浩教授にお話をうかがいます。

 2018年、アメリカのトランプ政権時代に始まった中国に対する一連の制裁的な措置、たとえばファーウェイ(華為技術)の電子デバイスをアメリカ及びその同盟国から排除することなどによって、米中関係は新たな冷戦時代を迎えたと言われています。大国の競争から生じた安全保障上の課題が経済面にも結び付く経済安全保障は、岸田政権においても重要なキーワードになっています。

 こうした環境のもとでアジアの産業立地、産業構造の大転換も現在進行形で進んでいるわけですが、そこで日本企業がとるべきアジアビジネス戦略とはどのようなものなのか。本日はそうしたことを中心にお話をいただくことになります。

「習近平の中国」とは

後藤 産業とアジアというマトリックスの交点でも、まず最重要なのは「習近平の中国」の本質は何か、というテーマです。

 新中国の誕生以来、毛沢東を除けば、習近平ほどある意味で独立した考え方を持ち、これまでの中国の歴史を変えるような大きな時代をつくろうとしている指導者は初めてだろうと私は考えます。「習近平の中国」の本質は2つの言葉で説明できます。1つは「共産党のピューリタニズム」。もう1つは「グローバル覇権の獲得」です。

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