リトアニア北部シャウレイ近郊にある「十字架の丘」はロシア帝国に対する蜂起の犠牲者を悼んで十字架が置かれたのが始まりとされている(C)EPA=時事
 

 本稿は、ソ連崩壊30周年という節目にあたり、エストニア・ラトビア・リトアニア(いわゆるバルト3国)のこれまでの安全保障外交の背景と論理を概説するものである。

 緊張しつづけるロシア・ウクライナ関係にバルト諸国は無縁ではいられないし、(リトアニアを中心とした)バルト諸国の対中国外交がEU全体と中国の関係性も左右している。

 本稿は、個別具体的な現下の状況について詳細な分析を提示するものではないものの、巨視的・通時的な観点からバルト諸国の外交政策の背景を概観し、大国と違って知られることの少ないバルト諸国外交の内在的論理の一端を紹介するものである。

 以下、バルト諸国にとってはロシアからの安全保障が最重要課題であること、そのために対米関係が最も重視されてきたこと、それらの原則から近年の対中関係を含めた態度変化も説明できること、を論ずる。 

 なお3カ国にはそれぞれの固有性もあるが、本稿では共通性の高い側面に着目して議論する。本稿に関するより詳細な学術的根拠や背景情報について知りたい読者は、近刊『世界変動と脱EU/超EU』(岡部みどり編、日本経済評論社)所収の拙稿を参照されたい。

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