ベラルーシとの合同軍事演習を行うロシアの戦車部隊(C)AFP=時事
 

 2014年から東部での紛争が続くウクライナ情勢は、昨年10月末頃からロシアがこれまでにない規模の兵力をウクライナ国境付近に集結し始めたことで急速に緊迫した。国境付  近のロシア軍は現在も増強が続けられており、米国政府を筆頭に「ロシアによるウクライナへの侵攻はいつ起きてもおかしくない」という認識が広まりつつある。 

 本稿では、国境付近に集結するロシア軍の戦力とウクライナ軍の現状を比較してみたい。

コンパクトで機動的となったロシア軍

 現在ウクライナ国境付近に集結しているロシア軍は10万人とも13万人とも言われ、「ソ連崩壊後最大の規模」と評されているが、具体的にはどのような戦力なのだろうか。

 まず、ロシア軍の中核である地上兵力の基本構成について説明しておきたい。

 現在のロシア軍の総兵力は実数にして約90万人とされており、うち地上兵力は陸軍28万、海軍沿岸部隊3.7万、空挺軍4.5万(これらを総称して「地上軍」と呼ぶことが多い)の計36.2万人である。

 陸上自衛隊の定員が約15万人であることを考えると意外と少ないが、これはロシア陸軍が2009年頃以降の軍制改革で兵員数を大幅に削減し、巨大で鈍重な軍隊からコンパクトで機動的な軍隊への転換を図った結果だ。それまでは「戦時動員によって2つの戦略正面(例えば欧州とアジア)で同時に大規模戦争を遂行可能」というソ連軍の体制を維持していたが、改革後のロシア軍は2正面での戦争遂行能力を捨てる代わりに、平時から兵員が充足され即応性の高い「少数精鋭」の軍を目指したわけである。

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