開会式会場にともる北京冬季五輪の聖火(中央)と打ち上げられた花火=4日、中国・北京(C)時事

 

 北京冬季五輪が華やかに開幕した。中国チームは早くも3つの金メダルを獲得(10日時点)しており意気軒昂だ。周辺地域では大気汚染対策のため工場の生産調整が行われ、北京では抜けるような青空が広がった。

 だが、その陰で当局は新型コロナウイルスの感染防止対策に神経をとがらせ、米欧による人権問題への非難にもハリネズミのように敏感になっている。大小様々な「愛国人士」が幅を利かせ、社会や経済には別種の「ブルー」(不安、憂鬱)な空気も漂う。以下の珍エピソードを切り口に中国の現状を描写してみたい。

カラオケ店に現れたいかつい中年男

 昨年末の寒さの厳しいある夜のこと。筆者は知人と連れだって北京市内の繁華街のカラオケを訪れた(いかがわしいほうでは無く、日本式の店である)。日系のお店なので、普段なら受付カウンターには日本語の上手な気のいい青年が座っているはずである。だがこの日は、目つきの鋭い、いかつい顔つきの中年男がカウンターによりかかって、たばこをふかしていた。革のジャケット姿である。

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