テルアビブと東京の二拠点研究生活の開始

執筆者:池内恵2022年3月11日

 昨年末に続けざまにこの欄を更新して、日々の観察記録だけでなく数年・数十年単位での変化の諸相をまとめてから、3カ月が経ってしまった。この前後は、細かく記すことは相応しくないが、職業上「とにかく忙しかった」としか言いようがない。この欄の更新を粘り強く待ってくださっている読者の皆さんには感謝の気持ちしかない。

 年度末が迫り、大学研究室の事業運営上の差し迫った事務作業が山積する中で、コロナ禍で延び延びになっていた海外拠点形成事業の実施のため、コロナ禍の制限を潜り抜けて、イスラエルのテルアビブに来ている。今後、2022年度いっぱいを目処に、テルアビブ大学モシェ・ダヤン中東アフリカ研究センターに客員研究員(Visiting Research Fellow)として籍を置き、イスラエルを拠点に、トルコやUAE(アラブ首長国連邦)など中東の中核的都市をめぐり、英国などに立ち寄りながら、中東の変貌をグローバルな文脈の上に位置づけて観察していく予定である。

 日本の大学教員としての任務を免除されたわけではないので、頻繁に現地との間を行き来することになる。コロナ禍によって停止していた国際移動の再開に先駆けて、動き始めたところである。多くの会議でテレビ電話が導入されてリモート参加が可能になり、大学の授業も、対面を本旨としつつも臨機応変のハイブリッド化(一部リモート授業への切り替え)が進む。こうした環境で可能になった、東京とテルアビブの二拠点による研究・教育活動を進めることになる。リアルの対面でこそ得られる知見と、電子的な手段によるヴァーチャルなネットワークの構築による情報の流通の両面を同時に得ようとする、欲張りな新しい研究生活のあり方を実験し、報告していこうと思う。

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