「アメリカ合衆国憲法」という迷える米国の大いなる呪縛

執筆者:ブルース・ストークス(Bruce Stokes)2022年3月14日
アメリカ人の5人に1人が「合衆国憲法は神によって与えられた」と信じているとの調査結果も(米ニューヨークにある競売商サザビーズで展示された合衆国憲法の原本の1部) (C)AFP=時事

 アメリカ合衆国憲法は、現行憲法として世界で最も長い歴史をもつ。1789年に施行されたので、1814年に成立したノルウェー憲法や、1831年制定のベルギー憲法よりも古い。そしてアメリカ国民は、自分たちの憲法が長く存続していることに大きな自負がある。しかしながら、233年前にできたこの条文は18世紀の世相や懸念事項を反映しているため、21世紀におけるアメリカや世界の目の前の課題には適応していない。その意味でいくつもの欠陥がみられる。

 アメリカの「外」の人にとって、現在起きている政争や、この国の政策論争が世界に与える影響について理解するには、合衆国憲法の制約・制限という文脈で考えれば、多くのことが見えてくる。

 かつて憲法に対する批判といえば、奴隷制の廃止が盛り込まれていなかったことや、女性の参政権が除外されていたこと、裕福な男性たちを利するように条文が作られた経緯そのものに対して向けられることが多かった。それらは疑いようのない不備であり、その多くは遅ればせながら修正されてきた。ただし、構造上の重大な欠陥は残ったままだ。

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