*佐伯啓思氏の講義をもとに編集・再構成を加えてあります。

出発点にあった日米「国家観」の差異

――佐伯先生の言論活動の柱の一つは、アメリカ論であると思います。1993年に『「アメリカニズム」の終焉――シヴィック・リベラリズム精神の再発見へ』という本を書かれ、2000年代に入ると『新「帝国」アメリカを解剖する』や『砂上の帝国アメリカ』などでアメリカ論を展開されました。

 それまではアメリカ経済学の考え方を批判していた先生が、そういう経済学を生み出したアメリカという国の文明に関する議論をするように変化していったかと思います。先生にとってのアメリカ論についてお聞かせください。

 大学院の頃に、経済学の範囲を広げ、社会学や政治学と関連させないとだめだと思っていました。当時私が関心を持っていたのは経済理論や経済思想ですが、公共経済学もその一つでした。経済学は基本的には、マーケット内の自由競争ですべて話が成り立つものです。しかしそうはいかない部分があり、それはいわゆる公共財と言われるもの、要するにマーケットで取引できないようなものですね。例えば軍隊、警察、消防や、公園、高速道路といった、国民の役に立つみんなが使うもので、これが公共財です。

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