イラン北東部マシュハドにあるレザー廟の敷地内(2021年5月23日、飯島健太撮影)

 

現場はシーア派の聖地

 イランでイスラム教の断食月ラマダンを迎えて3日目となった4月5日、北東部マシュハドで事件は起きた。現場が特異で重要な場所だったことから、ニュースは衝撃とともに一気に広がった。

 そこは、イランが国教とするイスラム教シーア派の第8代指導者イマーム・レザー(在位799~818年)をまつる廟だった。

 参詣者で賑わう庭園で、イスラム聖職者の男性3人がいきなり刃物で襲撃され、2人が死亡、1人が重傷を負った。

 インターネットで広がった事件の直後とされる動画には、淡い青色の着衣に茶系の羽織物を身につけた男性が、白い石のタイルの上で力なく仰向けに倒れている姿が映し出されていた。頭には、イスラム聖職者であることを示す白のターバンが巻かれている。胸から下半身にかけて着衣が真っ赤な血で染まり、男性はまったく動かない――。

 逮捕されたのは、アフガニスタン出身のアブドゥルラティフ・モラディ容疑者(21)だった。モラディ容疑者は1年前、パキスタンを通じてイランに不法入国していたという。その後、マシュハドに住み、事件を起こすまで引っ越し作業員として働いていた。

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