ブチャの墓地で犠牲者の葬儀を導く司祭(C)AFP=時事

 

空爆と地上侵攻の同時並行の評価は?

高橋 キーウ(キエフ)攻略を試みるまでの第1段階と第2段階への移行、さらに今という、大方に共有されているフェーズに区切って話をしてみようと思います。小泉さん、いわゆる第1段階の評価はどうでしょうか。

 

小泉 まず、ロシアが第1段階、第2段階というフェーズ分けを考えていたのかという問題があるのが、ちょっと厄介ですよね。おそらくそういうものは考えておらず、短い簡単な戦争で終わると思って始めたようにしか見えないですから。

 第1段階と言われるものは2月24日に始まっているわけですが、始まった空爆が数日間続くのかと思ったら地上部隊が越境してきた。しかも15万くらいしかいない兵力をかなり分散し、北部からも南部からも東部からも同時に攻めてきた。そのため大きな衝撃力を発揮できなかったように見えます。

 戦史研究家の大木毅先生が、ソ連の軍事思想の中には複数の構成軸をつくって相互に躍進しながら進んでいくという考え方はあるにはある、と指摘しています。複数の攻撃軸をつくること自体はおかしくないのだけれども、それはダイナミックなものでなければならず、複数の攻撃軸が刺激し合いながら最終的に主攻撃軸がつくられていかなければいけないのに、そういうものが全くなかった。平板に各正面から押していっただけで、どの正面も攻撃力を失ってしまった、と。私もその通りだと思います。

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