ウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅近くで、ミサイル攻撃を受け焼け焦げた車(C)AFP=時事

 

精密誘導兵器による市民も含めた戦略爆撃

高橋 ロシアの空爆について議論しましょう。

 初動の空爆のターゲットがすごく分散されていたという点は、私も同感です。たとえば私たちが中国の戦い方を考える時の基本的な発想は、ミサイルがまず飛行場とレーダーに飛んできて、日米の航空戦力を破壊し尽くすだろうと。その上で爆撃機による空爆が始まるのだろうと想定しています。ロシアも同じような作戦をするのかと思っていました。ところが、ウクライナ戦争の開戦時は、都市攻撃と軍事目標攻撃が分散された形で、どちらも効果は中途半端だったように見える。 

 さらに、精密誘導兵器を使って市民を爆撃するという発想が、西側の軍事理論に親しんでいる私にはありませんでした。

 

小泉 開戦当初から現在に至っても、ロシアの航空作戦には不可解なところが非常に多い。

「イスカンデル」など、あれだけの数の弾道ミサイルや巡航ミサイルを打てるアセットがあるうえに、300機もの戦術航空機をウクライナ周辺に集結させ、それに加え戦略爆撃機を投入しているわけですから、かなりの精密誘導兵器をウクライナ側に叩きつける能力があった。それにもかかわらず、どういうターゲッティングポリシーなのだろうかと疑わせるような、よくわからない空爆をやってみせたわけです。

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