【緊急対談】ロシア軍「不可解な作戦」から見えるプーチンの本音(下)

執筆者:高橋杉雄
執筆者:小泉悠
2022年5月10日
エリア: ヨーロッパ
ウクライナ東部クラマトルスクの鉄道駅近くで、ミサイル攻撃を受け焼け焦げた車(C)AFP=時事
プーチンには、力と力で殴り合うような古典的戦争を嫌う傾向も見えている。今後のドンバス攻勢でも自ら守勢に入る可能性があるが、それはゲームチェンジャーとしての生物化学兵器や核の使用にさらに近づくシナリオだ。(前半はこちらのリンク先からお読みいただけます)

 

精密誘導兵器による市民も含めた戦略爆撃

高橋 ロシアの空爆について議論しましょう。

 初動の空爆のターゲットがすごく分散されていたという点は、私も同感です。たとえば私たちが中国の戦い方を考える時の基本的な発想は、ミサイルがまず飛行場とレーダーに飛んできて、日米の航空戦力を破壊し尽くすだろうと。その上で爆撃機による空爆が始まるのだろうと想定しています。ロシアも同じような作戦をするのかと思っていました。ところが、ウクライナ戦争の開戦時は、都市攻撃と軍事目標攻撃が分散された形で、どちらも効果は中途半端だったように見える。 

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
高橋杉雄(たかはしすぎお) 1972年生まれ。防衛省防衛研究所防衛政策研究室長。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、ジョージワシントン大学コロンビアンスクール修士課程修了。専門は現代軍事戦略論、日米関係。著書に『現代戦略論―大国間競争時代の安全保障』(並木書房)、『日本人が知っておくべき 自衛隊と国防のこと』(辰巳出版)、『日本で軍事を語るということ 軍事分析入門』(中央公論新社)、共著に『「核の忘却」の終わり: 核兵器復権の時代』(勁草書房)、『新たなミサイル軍拡競争と日本の防衛』(並木書房)、『ウクライナ戦争と激変する国際秩序』(並木書房)、『ウクライナ戦争はなぜ終わらないのか デジタル時代の総力戦』(文春新書)など。
執筆者プロフィール
小泉悠(こいずみゆう) 東京大学先端科学技術研究センター准教授 1982年千葉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修了。民間企業勤務を経て、外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所客員研究員として2009年~2011年ロシアに滞在。公益財団法人「未来工学研究所」で客員研究員を務めたのち、2019年3月から現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主著に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』(同)。ロシア専門家としてメディア出演多数。
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