中国はロシア・ウクライナ戦争をどう見ているのか(C)EPA=時事

 

 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、当初の大方の予想と異なり、ロシア軍が苦戦し、首都キーウ(キエフ)をはじめ多くの大都市を陥落させるには至らず、戦争は長期化の様相を呈している。この戦争は、軍事作戦、情報戦、経済制裁など様々な側面を有し、その意味で現代における「新しい戦争」のあり方を示す材料となるだろう。

 中国はこの戦争をどのように見て、何を現実認識として学ぶのだろうか。またそれは将来起こるかもしれない台湾侵攻作戦にどのような影響を及ぼし得るだろうか。

 まだ中国国内では、今回の戦争の意味について公開の議論はあまり行われていない。もちろん軍内の研究機関は大いに注目し、研究していると考えられるが、それが表に出るまでにはまだ時間がかかるだろう。よって、ここでは戦争の展開と中国国内の断片的な議論をもとに考察してみたい。

浮き彫りになった台湾侵攻の難しさ

 結論から言えば、この戦争により、中国は台湾侵攻作戦の難しさを改めて認識し、作戦の実施にはこれまでよりも慎重とならざるを得ないだろう。非軍事的手段を用いた「新しい戦争」も、相手がやり方を理解していれば対応不可能ではないことが明るみになった。さらに軍事的手段による「従来からの戦争」でロシア軍がさらした多くの弱点は、中国にも共通しており、これらを克服しない限り苦戦は免れない。仮に現地勢力が政治的に団結して激しい抵抗を見せた場合、戦争は20世紀的な血なまぐさいものとなり、困難に直面するだろう。

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