ブチャでは300人以上の市民が殺害されたという(C)AFP=時事

 

 ウクライナの一般市民や戦闘状態にない兵士らを標的とした、ロシア軍による残虐かつ非人道的な行為に対し、ウクライナの内外から「ジェノサイド」という指摘が繰り返されている。

 4月3日、解放されたブチャの惨劇を前に、ウクライナ国防省は公式Twitterで、「新たなスレブレニツァ」ともつぶやいた。

 スレブレニツァとは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争末期の1995年7月、イスラム教徒の成人男性を対象に行われたセルビア人勢力による集団処刑を指している。第2次世界大戦後の欧州で最悪の紛争とされたボスニア紛争中、唯一、国際裁判機関でジェノサイドと認定された事件である。

 ジェノサイドとは、特定の集団を対象に、集団それ自体の破壊を目的とする犯罪を指す国際法上の概念で、犠牲者の人数や残虐性の度合いをはかる指標ではない。しかし、欧州ユダヤ人600万人を抹殺したホロコーストの記憶と直結し、実際にナチ・ジェノサイドを契機に造られた言葉・概念であるがゆえに、政治的な概念としても多用されている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。