プーチン「ジェノサイド認定」の実効性と日本の役割

執筆者:長有紀枝 2022年5月20日
エリア: ヨーロッパ
ブチャでは300人以上の市民が殺害されたという(C)AFP=時事
ロシア軍の残虐な行為が「ジェノサイド」に当たるのかどうか議論の的になっている。誰がどのように「ジェノサイド」と認定するのか。プーチン大統領を裁くことはできるのか。国際刑事裁判所(ICC)最大の資金拠出国である日本の役割とは。

 

 ウクライナの一般市民や戦闘状態にない兵士らを標的とした、ロシア軍による残虐かつ非人道的な行為に対し、ウクライナの内外から「ジェノサイド」という指摘が繰り返されている。

 4月3日、解放されたブチャの惨劇を前に、ウクライナ国防省は公式Twitterで、「新たなスレブレニツァ」ともつぶやいた。

 スレブレニツァとは、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争末期の1995年7月、イスラム教徒の成人男性を対象に行われたセルビア人勢力による集団処刑を指している。第2次世界大戦後の欧州で最悪の紛争とされたボスニア紛争中、唯一、国際裁判機関でジェノサイドと認定された事件である。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
長有紀枝(おさゆきえ) 立教大学教授。1963年生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。同大学院政治学研究科修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障」プログラム博士課程修了。博士(学術)。1991年より国際協力NGO「難民を助ける会(AAR Japan)」にて緊急人道支援、地雷禁止条約策定交渉などに携わる。同事務局長、理事長を経て、2021年より会長。2010年より立教大学社会学部、同大大学院21世紀社会デザイン研究科教授。主な著書に『スレブレニツァ・ジェノサイド—25年目の教訓と課題』(2020年、東信堂)、『入門 人間の安全保障 ー恐怖と欠乏からの自由を求めて』(2012年、2021年増補版、中央公論社)、『スレブレニツァ』(2009年、東信堂)がある。
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