GNSのバシャーガ首相(C)AFP=時事

 

 2021年3月にリビアの首都トリポリに暫定政府である国民統一政府(GNU)が設立されて以降、国際社会は同年12月に予定されていた大統領・議会選挙の実施を支援してきたものの、その内実は多様である。そして国際社会の不一致が、選挙プロセスや政治の安定を妨げる要因となってきた。

性急な選挙実施への懸念も

 欧米は、リビア内で対立する政府、議会、司法など重要な国家機関が互いの決定を妨害し合うことで政治の混乱が続く「リビア・トラップ」の解決のためには、正統性のある新政府の設立が最重要かつ喫緊の課題であるとして、スケジュールに沿った確実な選挙実施に向けて国内の主要アクター及び近隣諸国に圧力をかけてきた。2021年12月24日の選挙実施は、国連安全保障理事会決議第2570号および2571号でも明示されている。

 加えて、トルコが2019年に当時の暫定政府「国民合意政府(GNA)」と結んだ安全保障協力合意を盾に軍の撤退を拒絶していることから、新政府の設立によって同合意を破棄し、リビアからの外国軍・傭兵の撤退を進めたいとの思惑もあった。

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