リビアが直面する「首相が2人」の異常事態(下)一致できない国際社会

執筆者:小林周 2022年5月23日
タグ: 紛争
エリア: 中東
GNSのバシャーガ首相(C)AFP=時事
「2人の首相」が併存するリビアでは政治対立が先鋭化し、欧米や近隣諸国の間でも選挙プロセスをめぐる意見の相違が広がる。リビア安定化の「特効薬」はないという認識を持ち、安定化に向けて粘り強く働きかけることこそがいま国際社会に求められている。(前編はこちらのリンク先からお読みください)

 

 2021年3月にリビアの首都トリポリに暫定政府である国民統一政府(GNU)が設立されて以降、国際社会は同年12月に予定されていた大統領・議会選挙の実施を支援してきたものの、その内実は多様である。そして国際社会の不一致が、選挙プロセスや政治の安定を妨げる要因となってきた。

性急な選挙実施への懸念も

 欧米は、リビア内で対立する政府、議会、司法など重要な国家機関が互いの決定を妨害し合うことで政治の混乱が続く「リビア・トラップ」の解決のためには、正統性のある新政府の設立が最重要かつ喫緊の課題であるとして、スケジュールに沿った確実な選挙実施に向けて国内の主要アクター及び近隣諸国に圧力をかけてきた。2021年12月24日の選挙実施は、国連安全保障理事会決議第2570号および2571号でも明示されている。

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
小林周(こばやしあまね) 日本エネルギー経済研究所 主任研究員 専門はリビアを中心とした中東・北アフリカ地域の現代政治、国際関係論、エネルギー地政学。慶應義塾大学大学院にて修士号・博士号(政策・メディア)取得。米国・戦略国際問題研究所(CSIS)エネルギー・国家安全保障部、日本国際問題研究所などを経て、日本エネルギー経済研究所中東研究センター入所。2021年4月から2023年4月まで在リビア日本大使館にて書記官として勤務。編著に『アジアからみるコロナと世界』(毎日新聞出版、2022年)、主な共著に『紛争が変える国家』(岩波書店、2020年)、『アフリカ安全保障論入門』(晃洋書房、2019年)など。
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