シンガポールにとってウクライナ侵略は他人事ではない(C)AFP=時事

 

独自の対ロ制裁を発動

 2月24日に始まったロシアのウクライナ侵略について、東南アジア諸国の反応は分かれている。

 例えば、ベトナムやラオスといった、冷戦期から旧ソ連との友好関係が深かった国では冷淡な反応がみられ、目立った対ロシア批判・制裁などには参加していない。インドネシアのような地域大国も、今年度に議長国を務めているG20へのロシアの参加を支持しているように、基本的には様子見の姿勢が目立つ。最も象徴的なのが、3月3日のASEAN各国外相の共同声明で、ウクライナでの停戦を求めた一方、ロシアの名指しを避けたことだ。

 このような東南アジア諸国の中で、今回の事態に対して意外にも非常に明確な態度を示しているのがシンガポールである。

 2月24日、シンガポール外務省はロシアの行為は主権国家への正当な理由のない侵略であるとした強い非難声明を出し、2月28日の国連総会緊急特別会合でも、国連大使が対ロシア非難演説を行っている。

 同28日にはビビアン・バラクリシュナン外相が、国連決議を待たずに独自の対ロシア制裁を発動するという、過去に例のない方針を表明した。これを受けて3月5日には、ロシア大手4銀行・特定企業との金融取引禁止やハイテク機器・武器の禁輸を柱とした経済制裁導入が発表され、同月14日には金融管理局(MAS)が、ロシアの政府・中央銀行・特定銀行・企業がシンガポールで保有する資産・資金の凍結を命じている。

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