新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する岸田文雄首相(左から2人目)=6月17日 (C)時事

「次のパンデミックでは今度は子どもがバタバタ死ぬでしょう。そうなれば国は滅びますね」

 感染症の専門家はそう不気味な警告をする。今回の新型コロナウイルス感染症は高齢者の死亡率が圧倒的に高かったが、歴史的に見ると、子どもの死亡率が高い感染症が幾度も人類を襲ってきた。最大の脅威だった天然痘は根絶されたが、世界で広がりを見せる「サル痘」や、原因不明の子どもの急性肝炎など、専門家の警告を大袈裟だと一笑に付すことができない不気味さを感じる。

 では、われわれには何ができるのか。

 パンデミックが襲ってきた場合の様々な事態を想定し、危機に備えて準備をしておく他はない。日本人にありがちな「想定外」で何百万人もの死者を出すわけにはいかないのだ。そのためには、今回の新型コロナへの対応の「不備」を検証して、率直に反省し、同じ過ちを犯さないための体制の立て直しを本気で考え、実行しておく必要がある。ところが、である。

検証作業を阻んだ官僚の「無謬性」神話

「今回の新型コロナで日本は、世界的に見れば死者が少なく済みました。十分な量のワクチンを輸入し接種が進んだこともありますが、とても幸運に恵まれました。もはや政府内は『何とかうまく乗り切った』というムードで、『対応が失敗だった』という反省の声はほとんどありません。喉元過ぎれば熱さ忘れる、ということでしょうか」。そう、2年以上にわたる新型コロナ対応でのドタバタぶりを間近に見てきた中堅官僚は言う。

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