プーチン愛国主義を支える歴史教科書 

執筆者:西山美久2022年6月20日
5月9日の戦勝記念日に「無名戦士の墓」に献花をするプーチン大統領(C)EPA=時事

 ウラジーミル・プーチン大統領は国民の愛国心涵養のために歴史教育を重視している。 

 中でも、ロシアのナショナル・アイデンティティの中核をなす大祖国戦争(1941~45年の独ソ戦のロシアでの呼称)に対する思い入れは一段と強い。そのため、プーチン大統領はロシアの歴史認識を批判する近隣諸国を意識して、「西側がドイツへの融和を図ったミュンヘン協定が第2次世界大戦の原因だった」「ミュンヘン協定で孤立したソ連はドイツとの不可侵条約を結ぶしかなかった」などと独自の主張を展開している。 

 また、2004年にウクライナで欧米との関係強化を掲げたヴィクトル・ユーシェンコ政権が誕生した「オレンジ革命」やNATO東方拡大について、西側を非難してきたのは周知のとおりだ。 

 プーチン大統領は過去に歴史教科書の記述内容について不満を吐露したこともある。例えば、2007年6月に人文社会科学の教師等と会談した際、「現代史の出来事を深く客観的に記した教科書は、事実上存在しない」と発言した。歴史教科書には現代史の一部としてプーチン大統領の内外政を扱った記述も新たに盛り込まれるに至り、これまでの取り組みを正当化する狙いもあるのかもしれない。 

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