イラク・クルド自治区のスレイマニヤ(C)REUTERS/Mohammed Jalal
 

[イラク・スレイマニヤ発(ロイター)]イラク・クルド自治政府のマスルール・バルザニ首相は、ロシアに代わる天然ガスの供給源として、自治区のガス輸出能力を喧伝している。だが、バルザニ首相率いる与党「クルディスタン民主党(KDP)」と、故ジャラル・タラバニ元イラク大統領が率いてきた連立政権の下位パートナー「クルディスタン愛国同盟(PUK)」の二大勢力が対立している影響で、現時点での実現可能性は高くない。KDPが欧州にガス輸出計画を売り込む傍らで、PUKが企業や顧客との交渉から排除されたことに不満を募らせ、計画を阻止しているためだ。

 それ以前に、クルド自治区では域内への電力供給もままならない。自治区内にある13カ所の発電所のうち、5つはガスを使っているが、ガス不足のために能力の5割から7割しか発電できていない。まずは地元へのエネルギー供給が喫緊の課題なのだ。

 与党KDPとPUKは長い間勢力争いを続けてきたが、この数カ月で事態は悪化している。背景には、ガス問題をめぐる対立の他に、KDPが今年3月のイラク大統領選に慣習を破って候補者を立てたことがある。イラクでは首相をシーア派、連邦議会議長をスンニ派、大統領をクルド人から選ぶことになっており、従来この二つの政党は、大統領はPUKから、自治区首相はKDPから選出することで権力を分かち合ってきた。

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