独立行政法人の傘下組織には政治的監視の目が届きにくいという問題がある(写真は東京国立博物館)

「在任期間が長すぎた」「居座りにしか見えなかった」と、文部科学省の幹部OBが次官経験者の名を挙げて批判した。その矛先が向けられたのは、6月15日付で東京国立博物館長を降りた銭谷眞美氏(73歳/1973年文部省入省)だ。同氏は文科省の事務次官を務めた後、13年近く館長に居座り続けた。

   同博物館は「東博(トーハク)」の愛称で親しまれ、日本最古の歴史を持つ。銭谷氏は創立150年を迎えた今年を機に勇退したとみられているが、異常なのは、館長交代がマスコミなど、公に伝えられることなく進んだことだ。公式サイトの館長挨拶は後任の藤原誠前文科省次官(64/82年入省)の写真に変っているが、挨拶文の中身は銭谷氏時代とほぼ同じで、写真だけ取り替えようにも見える。

 東博は1872年(明治5年)に、旧湯島聖堂の大成殿で開催された博覧会をきっかけに「文部省博物館」として発足した。日本を中心とする東洋の美術作品と考古遺物を約12万件収蔵している。その中には国宝89件と国重要文化財648件(2021年3月末現在)が含まれている。

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