オデッサ港の穀物輸出ターミナル。サイロ(貯蔵庫)などの設備が見える。ウクライナは小麦の収穫期に入っているのだが、ターミナルは稼働していない @Adobe Stock

 ウクライナ外相のドミトロ・クレバが6月中旬に米誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿で嘆いた。

「アフリカ、アラブ、アジアの政府高官と話すと、最初は全面的な支持を表明してくれる。だがその後態度を変えて抵抗をやめたらどうかと促してくる。要するに皆ウクライナからの穀物を欲しいのだい」

 こんな話を聞くと「なんと弱腰な」とクレバに同情する。だが、パン不足が反政府暴動に直結する途上国政府からすれば、「戦争よりも穀物輸出を」という本音は切実だ。

「4億人が食糧不安」との推計も

 ウクライナ戦争が始まってから失敗続きのロシア軍だが、唯一上首尾に進んだのがオデッサなど黒海沿岸の港湾の海上封鎖であろう。自由港オデッサは「黒海の真珠」と呼ばれ、ロシア帝国に繁栄をもたらしソ連にとっても貿易の要だった。帝国の復活を夢見るウラジーミル・プーチン大統領がこの戦争で何としても落としたいと思っても不思議はない。

 封鎖の結果、小麦輸出量で世界の1割、トウモロコシで2割弱、ヒマワリ油で5割を占めるウクライナの穀物輸出が滞っている。平均して月に600万トンだった穀物輸出量は50万~20万トン程度に落ち込んだ。

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