道化師ボリス・ジョンソンを笑えなくなったイギリス社会(下)
2022年7月21日
英国を代表する憲法学者でオックスフォード大学名誉教授のヴァーノン・ボグダナーも、ボリス・ジョンソンにポピュリズムを見る。『テレグラフ』紙への寄稿で、彼はジョンソンを「ポスト2008年政治の産物」と位置づけた。
2008年は、リーマン・ショックに端を発した世界金融危機の年である。新自由主義と市場万能の発想が生んだこの危機の後には、社会民主主義の時代が到来すると、当初は予想された。しかし、ふたを開けると、実際に台頭したのは社会民主主義ではなく、ナショナリズムとポピュリズムであった。「理念」(アイデア)の政治から「アイデンティティー」の政治への転換が起きたのである。
この波に乗って、国家や地域のアイデンティティーをしきりに強調した政治家の1人が、ボリス・ジョンソンだったという。
ボグダナーはこれまでもフォーサイトで紹介した(2020年2月14日『ブレグジット後の英国「主権」考(上)(下)』、2021年5月1日『「スコットランド独立」の現実味(下)』)が、英国やEUの政治制度を熟知し、その土台をもとに具体的な政治の動きを切り取る論評で知られる。立場はやや保守的で、その安定感は政界や学界の強い信頼を得ている。
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