「主権国家同士の戦争」を仕掛けたプーチンだが、その企図があえなく潰えた今も戦闘は続いている(写真は、ロシアの砲撃で炎上する首都キーウの住宅)(C)AFP=時事

篠田英朗:千々和先生はご著書『戦争はいかに終結したか』(中公新書)で、戦争の終わり方について「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」という二つのパターンを提示されています。この本で示された枠組みと照らし合わせた場合、現下のウクライナ戦争の特徴や特異性をどう特徴づけられますか。

「非ナチ化」という言葉が示す強烈な意図

千々和泰明:この戦争が始まったときの演説で、プーチン大統領は「非ナチ化」という言葉を使いました。その「ナチ」はまさに、第2次世界大戦でソ連が連合国の一員としてナチス・ドイツを打倒したことにつながります。

 当時ソ連は米英とともに、“ナチスとは絶対に妥協しない、危険なこの体制を叩き潰してしまわなければいけない”と、いわゆる「紛争原因の根本的解決」を目指したわけです。プーチンがゼレンスキー政権を「ナチ」と位置付けたのは、ウクライナを「妥協できない相手」「共存できない敵」だと決めつけたという意味で、非常に衝撃的でした。

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