愛知県東栄町で700年続く「花祭」

 今年も夏祭りの時期が来た。

 観光庁の統計によると、日本には6000件程度の祭りや花火大会がある。一昨年・昨年はコロナ禍で中止が相次いだが、「ウィズ・コロナ」が進む今年はどの地域でも久々の開催となるところが多いようだ。

 先日、郷土新潟の知人と話していたら、今年は長岡の花火大会が3年ぶりに開催されるという。電話の向こうで嬉しそうに話す知人と同様、私も顔がほころんだ。私にとって花火大会は、幼少の頃の家族や友達との思い出を呼び覚ます記憶装置だ。

 

 祭りといえば、2016年に取材した愛知県東栄町の「花祭」は想像を超える体験だった。

 東栄町は愛知県北東部の静岡県浜松市と接する「奥三河」と呼ばれるところにある。人里離れた山奥のわずかな平地や緩やかな斜面に形成された、いわゆる「限界集落」である。その東栄町で700年続く「花祭」は、町内11の地区で晩秋から翌春にかけて行われる神楽の祭りで、何種類にも及ぶ舞を夕刻から翌朝まで舞い続ける。「奇祭」と呼ばれるだけあって、その神秘性と意外性、エネルギー、参集した人々の一体感は得も言われぬものだった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。