ベトコンに対する米軍の激しい空爆も、北ベトナムを挫くことはできなかった。「認知戦」も同じ道をたどるのか(写真は1965年8月、B52戦略爆撃機による空爆)(C)AFP=時事

「認知戦」の理論は、中国、ロシア、米国などにおいて近年急速に発達している。特に、中国人民解放軍の幹部や軍事戦略家は、「認知戦」を「戦わずして敵を屈する」という孫子の思想を体現するものと述べており、戦争の特性を根本的に変化させ得る概念として捉えている。

 今般のロシア・ウクライナ戦争においても、デジタル手段が発達した現代において、戦略的に情報を発信して人々の認知に影響を及ぼし、自国世論や国際世論の支持を獲得することの重要性が示された。ただし、同時にロシア・ウクライナ戦争は、認知戦の優劣はあくまでも前提条件であり、最終的に戦争の帰趨を決するのは物理領域における戦闘であることを示している。

 本稿においては、「認知戦」の将来について考察を行う。「認知戦」は、人間の「認知」の領域において行われる戦いであるが、こうした「新たな領域」の出現を、人類はこれまでの歴史において何度も経験している。こうした過去の歴史を振り返ることにより、将来についての洞察を得ることができる。

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