「認知戦」の将来(下):「領域横断作戦」という将来像

執筆者:高木耕一郎 2022年8月1日
タグ: アメリカ 中国
ベトコンに対する米軍の激しい空爆も、北ベトナムを挫くことはできなかった。「認知戦」も同じ道をたどるのか(写真は1965年8月、B52戦略爆撃機による空爆)(C)AFP=時事
かつては無敵と思われた「戦略爆撃」や「サイバー攻撃」も、戦争の帰趨を左右するほどの効果は期待できなくなりつつある。同様に「認知戦」も、中国が狙う“戦わずして勝つ”ような戦略的効果を発揮するとは考えにくく、むしろ他の領域と組み合わせる作戦のひとつとして研究と理論化が進むだろう。(上編はこちら)(中編はこちら)

「認知戦」の理論は、中国、ロシア、米国などにおいて近年急速に発達している。特に、中国人民解放軍の幹部や軍事戦略家は、「認知戦」を「戦わずして敵を屈する」という孫子の思想を体現するものと述べており、戦争の特性を根本的に変化させ得る概念として捉えている。

 今般のロシア・ウクライナ戦争においても、デジタル手段が発達した現代において、戦略的に情報を発信して人々の認知に影響を及ぼし、自国世論や国際世論の支持を獲得することの重要性が示された。ただし、同時にロシア・ウクライナ戦争は、認知戦の優劣はあくまでも前提条件であり、最終的に戦争の帰趨を決するのは物理領域における戦闘であることを示している。

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執筆者プロフィール
高木耕一郎 ハドソン研究所客員研究員。陸上自衛隊1等陸佐。1978年生まれ。北海道大学工学部卒、北海道大学大学院工学研究科修了後、2004年陸上自衛隊入隊。陸上幕僚監部防衛部防衛課防衛班、統合幕僚監部運用部運用第1課防衛警備班等を経て現職。最近の著作は、”Future of China’s Cognitive Warfare: Lessons From the War in Ukraine”, War on the Rocks (July 22, 2022) ; ”New Tech, New Concepts: China’s Plans for AI and Cognitive Warfare”, War on the Rocks (April 13, 2022)、「新領域から『バトル・オブ・ナラティブ』へ」(『戦略研究』、2020年)、「新領域に広がる将来戦と『戦場の霧』」(『国際安全保障』、2020年)、「新領域における将来戦」(『戦略研究』、2019年)、「無人兵器は何処に向かうのか」(『戦略研究』、2018年)など。
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