*お二人の対談内容をもとに編集・再構成を加えてあります。

「保守同士の内ゲバ」としての日本政治

河野 大井赤亥さんは政治学者であり、また立憲民主党広島県第2区総支部長代行を務め、2021年の衆議院選挙にも出馬したという、「現実政治」の側の人でもあります。

 大井さんが昨年出版された『現代日本政治史――「改革の政治」とオルタナティヴ』は、現代政治の流れを「守旧保守」と「改革保守」の対立という、一貫したパースペクティブのもとに捉えた、大変面白い本です。その「あとがき」で、マルクスの「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」という論文に触れていらっしゃったのを興味深く感じました。

 マルクスは「ブリュメール18日のクーデター」という歴史的な事件を目撃し、この「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」という有名な論文を書きます。ただ、このときマルクスが政治史的なセンスを発揮し、鋭い筆致で事件を分析できたのは、彼がもともと期待していた勢力が早々と退場し、敵同士の内ゲバを外から眺めるといった状況だったからだというのが大井さんの指摘です。

 同じことが、大井さんのこの『現代日本政治史』という本にも言えそうです。つまり、自民党など保守陣営における、旧来型保守勢力と、新自由主義的勢力の「内ゲバ」を、外部から描いたのが、大井さんの本なのだと。非常に興味深い視点であり、面白く感じました。

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