岸田総理は「政治の決断が求められる項目を示してもらいたい」と指示したという[GX実行会議=7月27日](C)時事

「2050年のカーボンニュートラルに向けて、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求していくことが重要」「エネルギー安全保障なしには脱炭素はなしえない」――。

 あの教訓は、すっかり風化してしまったのだろうか。11年前の東京電力・福島第一原子力発電所の大惨事など、どこ吹く風。“原子力ムラ”の人々の執念は凄まじい。

   経済産業省はお盆に休みに入る直前の8月9日、大臣の諮問機関「総合資源エネルギー調査会」の「電力・ガス事業分科会 原子力小委員会」を開き、次世代原子力発電技術の開発を謳う「カーボンニュートラルやエネルギー安全保障の実現に向けた革新炉開発の技術ロードマップ」をまとめ、「革新軽水炉(改良型軽水炉)」の商用運転を「2030年代」に始めると明記した。原発の新設や建て替えを認めてこなかった歴代政権の判断を見直すよう迫ったのだ。

   この初夏に俄に沸き起こった、今夏や今冬の電力不足を憂う論議や、ロシア軍のウクライナ侵攻を機にエネルギー安全保障の重要性を強調する議論にも、その誰にも反論されない正当性を利用するかのような“原子力ムラ”の人たちの影がちらつく。

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