先日この欄に記したトルコのイスラエルとの「和解」は、イスラエルが陰に日向に音頭をとって形成してきた「トルコ包囲網」を構成する主要国に、エルドアン大統領がいわば「詫びを入れる」行脚の延長線上にある。

トルコの台頭と孤立

   トルコのイスラエルとの関係は、トルコのUAE、サウジアラビア、エジプトなど有力アラブ諸国との関係と次第に交錯するようになっている。

   トルコの有力アラブ諸国との関係の悪化は、2011年の「アラブの春」をきっかけにしている。「アラブの春」でアラブ諸国の政権が揺らいだ時、それまで弾圧されていたムスリム同胞団が政治の表舞台に出た。エルドアンをはじめとするトルコのAKP政権の要人は、イスラーム主義者の国際的なつながりにより、ムスリム同胞団の幹部らとは長く盟友関係にあった。エルドアンから言えば、アラブ諸国のいわば「心の友」たちが、牢獄から出て、政権に就いたのである。これを助けるのは当然ということだろう。

   アラブ諸国のムスリム同胞団系の勢力にとっても、「アラブの春」の時点で既に10年近く政権の座にあったトルコのエルドアン政権とAKPは、「民主主義によって台頭する穏健なイスラーム主義勢力」のモデルに見えた。規範的な力も借りて、トルコはエジプトチュニジアリビアシリアなど、「アラブの春」によって政権が揺らぐか倒れるかした国々の政治に介入した。

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