国際送電網によるエネルギー安全保障がトレンドになりつつある(C)teerapon/adobe.stock.com

 

 ロシアが2022年2月24日にウクライナに侵攻して以後、石油や天然ガスの供給不安が広がり、世界的な化石燃料価格の高騰を引き起こしている。

 欧州諸国にとって、ソ連時代から供給が続けられてきたロシアからの天然ガス供給は半ば信頼できるものだったが、その信頼はついえた。エネルギー調達の再構築を急ぐ欧州議会は、議論の多かった原子力発電を脱炭素技術として用いる意思決定に踏み切り、中東や米国からのLNG(液化天然ガス)調達を増やし、2022年のEU(欧州連合)の天然ガス輸入は中国を抜いて世界最大となる見込みだ。エネルギーの海外依存度の高い日本へのリスクも高まっている。

EU送電網に接続したウクライナ

 近年ロシアと欧州諸国は脱炭素をめぐり対立してきた。欧州は偏西風の通り道に当たり、広大な平野と遠浅の海という地勢を生かし、風力発電を急速に増やすことができた。風力発電は発電量が風任せで変動が大きいため、季節ごと、昼夜、場所ごとで異なるが、国際送電網を通じて欧州全域で電力の融通が可能となった。実際、ドイツは冬など風況の強い時期に余剰の風力発電の電力をフランス、ポーランド、イタリアなどに輸出している。

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