ミハイル・ゴルバチョフという「聖なる愚か者」

Foresight World Watcher's 2Tips

執筆者:フォーサイト編集部2022年9月2日
1990年11月20日、パリで開かれた欧州安全保障協力会議(CSCE)首脳会議で思索に沈むゴルバチョフ氏 (C)AFP=時事

 今週もお疲れ様でした。ソ連の記憶が鮮明な世代の読者にとっては、指導者としてまずイメージが浮かぶのは16年以上も書記長の地位にあったレオニード・ブレジネフではないでしょうか。記憶の中を掘り起こせば、そのイメージはまず四角い。マッチ箱かいな?  と思うシルエットの指導者が去り、ぼんやりしているうちに交代した気がする2人の書記長を経て、ミハイル・ゴルバチョフが登場した時にはなんと言ってもその丸さと柔さが新鮮でした。

  英首相マーガレット・サッチャーが“話せる男”として西側社会にプロデュースしたゴルバチョフですが、一方で「東欧・中欧という戦略的に重要な地域に対する持続可能なビジョンがなかった」とアメリカ・カトリック大教授のマイケル・キンメイジは指摘します。「聖なる愚か者」は失敗を成功として、そして成功を失敗として経験する。不変と思われた秩序を破り、冷戦の物語を結末へと展開させたゴルバチョフは、まさにトリックスターさながらに正誤を超えて世を去りました。フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事2本、皆様もよろしければご一緒に。Hope you have a great weekend!

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