政治的または軍事的目的を正当化するために、「事実」をリアルタイムで書き換える「歴史修正主義3.0」の時代に私たちは生きている (C)EPA=時事

 「歴史修正主義」というと、わたしたちは過去についての問題だと考えがちだ。実際には、これらは過去の操作を手段として将来的な利益を引き出すための、未来志向な思想である。過去を書き替えることで現在の評価を替え、これによって未来も変えることが意図されている。

 現在、歴史の歪曲は、直近の過去を対象になされるようになっている。出来事の発生とほぼ同時に事実の否認が始まる。具体的には、目下のウクライナ戦争が良い例だろう。現在起きていることの隠蔽と否認、これを包み隠すためのメディアを駆使した情報戦とプロパガンダが繰り返されている。

 ここに政治的資源が投入され、領土の変更や住民の編入などの制度的変更が加われば、歪曲された過去は社会的に既成事実化してゆく。そうすると事実の否認は、実際に歴史を違った方向へと導いてゆく。遠からぬ将来、ロシアとウクライナでは相当異なる歴史がそれぞれに「正しい歴史」と位置づけられて、国民に受容されていることは間違いない。そしてこの歴史像は、さらに次の世代へと継承されてゆくだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。