報告書には日本も「国際的パートナーのより広いグループ」として位置付けられている[キエフの大統領府で会見したイェルマーク・ウクライナ大統領府長官(左)とラスムセン元NATO事務総長=9月13日](C)EPA=時事

 ウクライナ東部と南部におけるウクライナ軍の反転攻勢、領土奪還が進みつつあるが、その先にどのような停戦・休戦・終戦を見据えるとしても、ウクライナにとって欠かせないのは、戦闘行為が終了した後、国の安全――主権、領土の一体性、そして国民の生命・財産――を守るための仕組みである。それがない限り、いったん戦闘が止んだとしても、いつまたロシアによる侵攻が再開されてもおかしくない。実際、ロシアが停戦に言及する際には、それは「時間稼ぎ」にすぎないのではないかとの疑問が常に浮かぶ。

 2022年2月の侵略を受け、同3月末までにはかなり具体的な停戦協議がロシアとウクライナの間で行われ、その一部をトルコが仲介する形になっていた。そこで議論されていたのは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)加盟を断念し、「中立化」するかわりに、「安全の保証(security guarantee)」を実現する枠組みを検討するというものだった。しかし、NATOに加盟せずに信頼に足る安全の保証を確保するのは、現実には極めて困難だった。安全の保証の信頼性を引き上げようとすれば、それは安全保障条約、つまり同盟に行きつくのであり、中立化とは相いれなくなる。

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