ウクライナの「安全の保証」――「キーウ安全保障協約」は対露同盟に向かうのか

執筆者:鶴岡路人 2022年9月22日
エリア: ヨーロッパ
報告書には日本も「国際的パートナーのより広いグループ」として位置付けられている[キエフの大統領府で会見したイェルマーク・ウクライナ大統領府長官(左)とラスムセン元NATO事務総長=9月13日](C)EPA=時事
9月13日に発表された「キーウ安全保障協約(Kyiv Security Compact)」に関する報告書は、2022年3月の停戦協議で示された「ウクライナの中立化」を放棄している。「EUおよびNATOへの加盟」を最終ゴールに置きつつ、過渡期の形態として事実上の対露同盟結成を呼びかけるウクライナの強い意志の表明に、米・英・カナダ・ポーランドなど安全の「保証国」はどこまでコミットできるかを問われることに。

 ウクライナ東部と南部におけるウクライナ軍の反転攻勢、領土奪還が進みつつあるが、その先にどのような停戦・休戦・終戦を見据えるとしても、ウクライナにとって欠かせないのは、戦闘行為が終了した後、国の安全――主権、領土の一体性、そして国民の生命・財産――を守るための仕組みである。それがない限り、いったん戦闘が止んだとしても、いつまたロシアによる侵攻が再開されてもおかしくない。実際、ロシアが停戦に言及する際には、それは「時間稼ぎ」にすぎないのではないかとの疑問が常に浮かぶ。

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カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センター長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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