総務省やNHKの衣の下から鎧が覗く[受信料の値下げ方針について記者会見で説明する前田晃伸NHK会長=10月11日](C)時事

「視聴者への還元として、来年10月から受信料の1割値下げを実施する」――。10月11日、NHK(日本放送協会)は夜の看板ニュース番組などで、自局の経営委員会が、テレビを持つ国民に支払いを義務付けている受信料の引き下げを盛り込んだ経営計画(2021~2023年度対象)修正案を了承したと伝えた。

 ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源・農産物市況の高騰と円安を引き金にした物価高に苦しむ庶民にとっては、嬉しい稀有な値下げのニュースである。

 ところが、NHKが今回の修正で大盤振る舞いする相手は視聴者だけではない。実は、同業のライバルである民放(民間放送局)に対しても、「協力強化により、効率的で強靱な放送ネットワークを維持します」と明記、中継局やマスター設備など放送インフラの共有化を進めていく方針を盛り込んだのだ。これは、経営の大黒柱である広告収入の長期減少傾向に悩む民放各社にとっては慈雨のような申し出である。

 見過ごせないのは、2つの大盤振る舞いの裏に、NHKの新時代へ向けた野望が隠されていることだろう。その野望とは、戦前のラジオからスタートし、地上波・衛星波のテレビ放送に乗り換えてきた「本来業務」に新たに「インターネット」を取り込むというものだ。

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