2016年2月7日、北朝鮮の弾道ミサイル発射を受けてNSC四大臣会合に臨んだ安倍晋三首相(当時)ら  (C)時事/内閣広報室提供

 凶弾に斃れた安倍晋三元総理の「遺産」の一つは、「NSC(国家安全保障会議)」創設である。

 2022年8月2日のナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国は、台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。この間に中国は、日本のEEZ(排他的経済水域)内にも5発の弾道ミサイルを撃ち込んだ。これを受けて日本政府は12日に、東アジア情勢を議題として岸田文雄内閣改造後初のNSC四大臣会合を開催した。

 また台湾問題の余波で日中外相会談が直前で中止になると、17日に「NSS(National Security Secretariat=内閣官房国家安全保障局)」のトップである秋葉剛男局長が訪中して、中国外交を統括する楊潔篪・共産党政治局員と会談し、関係修復を図るなど存在感を示した。NSSは、閣僚級の政治的合議体であるNSCを補佐する、事務方の行政スタッフ組織である。

 安全保障課題への対応は、もはや外務省、防衛省といった一官庁の所管にとどまらない。内閣主導の下で、政府全体による取り組みが求められている。そして日本の安全保障政策の「司令塔」として第二次安倍政権期の2013年12月に創設されたのが、NSCである。

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