遺骨を探し続けた「札幌の女性」

執筆者:2022年10月30日
大道兵長の甥・岡澤利寿さん(右)と生前の鳴海美栄子さん(左)  岡澤利寿さん提供

 

小説のような人生

 夫婦で取材をするようになった当初、夫が写真を撮り、私が記事を書く形で分業していた。でも最近は、お互いの領域にどんどん踏み込むことで、仕事を楽しむようにしている。哲二はカメラマンなので、何事にも感性を重視するきらいが。ゆえに、最後にまとめる作業は、私が冷静に取り組もうと心掛けてきた。にもかかわらず今回は、女としての感傷に揺さぶられる自分に戸惑っている。

 その理由は、写真返還の活動中に登場した女性たちの存在。彼女らが果たした役割をもう少しきちんと解き明かしたい。甥の岡澤公久さんが話してくれた、「大道正公さんの遺影を届けた札幌の女性」が、どうしても心に引っ掛かるのだ。

 伯父の写真を受け取って、にこやかに帰ろうとする公久さんを呼び止めた時のこと。「え、札幌の女性? 鳴海のおばさんですね。はい、戦地の伯父と文通で交流されていました。たしか、下の名前は美栄子といったかな」と小首を傾げる。そして、「おばさんの人生はね……。それはもう純愛小説が書けますよ」と遠い目に。

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