2022年9月22日、ロシア-フィンランド間の国境検問所に列をなすロシアからの車[ヴァーリマー、フィンランド](C)AFP=時事

 ロシアによるウクライナ侵攻は、「プーチンの戦争」と呼ばれることが多い。侵攻を決定したのがウラジーミル・プーチン大統領であることは明確だ。その背後には、もし大統領がプーチンでなければ、このような形での侵攻はおこなわれなかったはずだという理解も存在する。いずれにしても、悪いのは大統領、そしてそうした大統領の下のロシア政府であって一般のロシア国民ではないというのである。こうした言説は、戦争においてはよく使われる。「あなた方市民は敵ではない」として、人心の掌握を目指すのである。一般国民は被害者だ、という考え方にもつながる。

 今回、ロシアに対する米欧日などによる制裁も、基本的にこうした理解に沿っておこなわれてきた。しかし、ここにきて一般のロシア国民をどのように扱うべきかという議論を避けてとおれなくなってきた。最大のきっかけは、2022年9月21日にロシアで発表された30万人規模の動員である。これによって、一般のロシア人にとって、ウクライナでの戦争が急に自分の問題になり、動員の対象になることを恐れる成人男性の大規模な国外脱出が始まった。そうした「動員逃れ」のロシア人をどのように扱うかという問題が発生したのである。

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