中国の出版業界が30年間成長し続ける理由(上)

執筆者:馬場公彦2022年11月20日
 北京市内の大型書店。カフェも併設された瀟洒な店内は、市民の集いの場となっている(筆者撮影)

 中国の出版業界に対する日本の読書人・出版社の関心は低い。それは日本で翻訳出版されている中国刊行の書籍の点数の圧倒的な少なさが如実に立証している。いっぽうで、中国の出版人は日本の出版動向を常に注視し、読者もまた日本の書籍やクリエーターたちに熱い視線を送り、日本に関連する書籍は種類・点数ともに活況を呈している。

 中国の出版業界の経済規模はここ30年間、右肩上がりを続けており、売上高規模においてほぼ日本と肩を並べるくらいにまで成長した。

 なぜ中国の出版業は急成長を続けているのか、日本のコンテンツはなぜ人気があるのか、選書・編集・営業にどのような特色があるのか。中国の出版業界の現状について、出版社、書店、読者、さらアカデミズムの実像を通して、その目覚ましい成長の背景に迫る。

新刊点数は日本を凌駕、昔からのベストセラーも売れ続ける

 コロナ禍に見舞われる直前の2019年、中国の小売部門での年間書籍販売総額は1022.7億元(国家統計局発表、当時の円元レートで1兆5494億円)となった。この数字は統計の公表が始まって以降、初の1000億元の突破で、同年の日本の出版業界規模(1兆5432億円、公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所発表)とついに肩を並べた。

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