中国の出版業界が30年間成長し続ける理由(下)

執筆者:馬場公彦2022年11月20日
筆者も参加した北京市内の大型書店で行われた新刊イベント(筆者提供)

巨大なモバイルコンテンツ産業への参入を目指して

 中国新聞出版研究院が発行する『2020-2021 中国デジタル出版産業年度報告』によると、2020年の中国のデジタルコンテンツの売上は1兆1781億6700万元(約23兆5633億円)と巨大なマーケットを形成している。しかし、その大半はアニメ動画やゲーム、音楽、教育などで、いわゆる日本で言うところの「電子書籍」は、雑誌と書籍を合わせても86.53億元(約1730億円)。紙の本を含めた書籍の総売上のうち8.9%に過ぎず、マーケットとしては未成熟で、出版各社の経営を支えるところまでは至っていない。とはいえ電子書籍・雑誌・新聞を合わせた売上の伸びは前年比+5.56%で伸びしろは大きい。

 ただ、ここで留意しなければならないのが、先の報告書に示された「モバイル出版」というカテゴリーだ。このマーケットはデジタルコンテンツの売上の中で約20%(2448.36億元/約4兆8967億円)を占めているのである。これは、スマートフォンやタブレット、読書リーダーなど移動型デバイスを通じて新聞雑誌・書籍・漫画・アニメ・オーディオブックなどのコンテンツの読書行為から発生するプラットフォーム運営企業の収入を指す。このなかに日本でいう電子書籍が含まれている。モバイル出版コンテンツのユーザーの85%、閲読時間の97%はモバイルのデバイスで(iReserch調べ)、その残りがPCということになり、実態に即してざっくり言えば、モバイル出版とはモバイルで享受されるデジタルコンテンツの総称である。

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