中国の出版業界が30年間成長し続ける理由(下)

執筆者:馬場公彦 2022年11月20日
タグ: 中国
エリア: アジア
筆者も参加した北京市内の大型書店で行われた新刊イベント(筆者提供)
かつて「海賊版天国」と呼ばれた中国は、いまや知財戦略を国策化しデジタルコンテンツの海外輸出に舵を切った。しかし、同時に国内では、共産党の指導に沿った「主題図書」の出版に各社が鎬を削る光景も。(前編はこちらから)

巨大なモバイルコンテンツ産業への参入を目指して

 中国新聞出版研究院が発行する『2020-2021 中国デジタル出版産業年度報告』によると、2020年の中国のデジタルコンテンツの売上は1兆1781億6700万元(約23兆5633億円)と巨大なマーケットを形成している。しかし、その大半はアニメ動画やゲーム、音楽、教育などで、いわゆる日本で言うところの「電子書籍」は、雑誌と書籍を合わせても86.53億元(約1730億円)。紙の本を含めた書籍の総売上のうち8.9%に過ぎず、マーケットとしては未成熟で、出版各社の経営を支えるところまでは至っていない。とはいえ電子書籍・雑誌・新聞を合わせた売上の伸びは前年比+5.56%で伸びしろは大きい。

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執筆者プロフィール
馬場公彦(ばばきみひこ) 1958年生、長野県出身。北海道大学文学部卒・同大学院大学院東洋哲学研究科修了。2010年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科博士課程修了、学術博士。岩波書店にて長く編集者として活動、編集部部長、ライツマネジメント部部長など歴任。2019年より北京大学外籍専家、2022年より北京外国語大学副教授。日中関係論・メディア研究専攻。単著『『ビルマの竪琴』をめぐる戦後史』2004年、法政大学出版局、『戦後日本人の中国像――日本敗戦から文化大革命・日中復交まで』2010年、新曜社,『現代日本人の中国像――日中国交正常化から天安門事件・天皇訪中まで』2014年、新曜社、『世界史のなかの文化大革命』2018年、平凡社、『播種人--平成時代編輯実録』2019年、上海交通大学出版社、など
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