プラチャーティポック王立学院(KPI)にてJICAチェア講義を行う筆者(写真提供:JICA 以下同)

 9月中旬にタイに行った。

 チュラロンコーン大学で明治維新に関する講義をし、プラチャーティポック王立学院で、現代の日本の外交・安全保障政策と東南アジアとの関係について講演した。

 世界では「開発学」の本場はイギリスだといわれている。しかし私は、西洋が世界を支配する中で、非西洋から最初に近代化を成し遂げた日本の経験が、途上国にとってもっとも参考になると考える。それゆえ、2018年から、途上国から来日する留学生に日本の近代化や戦後復興について学んでもらうプログラム(JICA開発大学院連携)を作り、また2020年から、世界の途上国に日本の近代化などについて学んでもらう講座を作っている。これを「JICAチェア」(JICA日本研究講座設立支援事業)と言って、現在、約60のチェアができている。その一環として、日本の講師を派遣するのだが、私もその1人として、世界各国を訪問している。

独立を維持し続けたタイ

 タイで日本の近代化の話をする場合、当然、両国の近代化を比較して論じることになる。かつてアジアで独立を維持したのは、日本、タイ、中華民国の3つだけだった。このうち、中華民国は日本を含む列強によって侵食されたから、日本とタイだけだったと言ってもよいし、日本は戦争に敗れて占領下に入ったので、独立を維持したのはタイだけと言ってもよいかもしれない。

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