新・日本人のフロンティア (18)

タイとの関係を再考する――学術交流と有識者の対話を

執筆者:北岡伸一 2022年12月10日
タグ: 日本 タイ
エリア: アジア
プラチャーティポック王立学院(KPI)にてJICAチェア講義を行う筆者(写真提供:JICA 以下同)
明治期に始まり、戦前戦中の複雑な関係を経て、戦後はODAと直接投資を媒介として築かれてきた日本とタイとの関係が今、転機を迎えている。日本への関心が薄まりつつある中、必要なのは留学生を招くなどの学術交流と、政府から独立した有識者の対話の枠組みだ。

 9月中旬にタイに行った。

 チュラロンコーン大学で明治維新に関する講義をし、プラチャーティポック王立学院で、現代の日本の外交・安全保障政策と東南アジアとの関係について講演した。

 世界では「開発学」の本場はイギリスだといわれている。しかし私は、西洋が世界を支配する中で、非西洋から最初に近代化を成し遂げた日本の経験が、途上国にとってもっとも参考になると考える。それゆえ、2018年から、途上国から来日する留学生に日本の近代化や戦後復興について学んでもらうプログラム(JICA開発大学院連携)を作り、また2020年から、世界の途上国に日本の近代化などについて学んでもらう講座を作っている。これを「JICAチェア」(JICA日本研究講座設立支援事業)と言って、現在、約60のチェアができている。その一環として、日本の講師を派遣するのだが、私もその1人として、世界各国を訪問している。

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執筆者プロフィール
北岡伸一(きたおかしんいち) 東京大学名誉教授。1948年、奈良県生まれ。東京大学法学部、同大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)。立教大学教授、東京大学教授、国連代表部次席代表、国際大学学長等を経て、2015年より国際協力機構(JICA)理事長、2022年4月よりJICA特別顧問。2011年紫綬褒章。著書に『清沢洌―日米関係への洞察』(サントリー学芸賞受賞)、『日米関係のリアリズム』(読売論壇賞受賞)、『自民党―政権党の38年』(吉野作造賞受賞)、『独立自尊―福沢諭吉の挑戦』、『国連の政治力学―日本はどこにいるのか』、『外交的思考』、『世界地図を読み直す』など。
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