リベラルは米社会の求心力となるのか

執筆者:渡辺靖2022年12月19日
人工妊娠中絶の権利を訴えて米連邦最高裁判所前で抗議活動をする人々(C)EPA=時事
 

 しばしば「分断」や「党派対立」という言葉で形容される米社会。「南北戦争以来最悪」「内戦」といった表現にまで出くわすようになって2、3年になる。とりわけ2021年1月にドナルド・トランプ大統領(当時)の支持者の一部が暴徒化した連邦議会議事堂襲撃事件は衝撃的だった。議会警察によると、連邦議員に対する脅迫件数は2021年1年間で9600件に及び、過去5年間で倍増しているという。言葉(言論)はもはや無力であり、力(実力行使)しかないということだろうか。暴力のハードルが下がっている気がしてならない。

 こうした状況を前に、各所から米国の分断状況の行方について聞かれることが多い。その際、私は楽観的シナリオと悲観的シナリオの両方を伝えるようにしている。

楽観的シナリオ:リベラルを基調に「分断」が緩和

 楽観的シナリオは主に人口動態に注目するもので、人種構成が多様化し、2045年前後には白人が過半数を割る一方で、より多様性に寛容でリベラルな若い世代(ミレニアル世代やその下のZ 世代)が政治や社会を牽引してゆくと推測する。このシナリオが正しければ、次第に米社会はリベラルが基調となり、今日の対立は過渡期ゆえの混乱だったと回顧されることになる。

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