このプーチンの戦争では、社会・経済・市民生活が破壊されるまで人々の殺傷が続きかねない(写真は3月12日、キエフの北に隣接するイルピンのもの) (C)AFP=時事

 

プーチンは確かに理解不能な軍事行動を続けているが、それを「狂った」と片付ければ重要な本質を見落とすだろう。侵攻目的はウクライナの占領自体にはなく、社会をいかに傷つけ破壊して、将来にわたるNATO非加盟と東部地方分離を認めさせるかという政治的要素にあるはずだ。この「傷つける力」という19世紀的な武力行使観のもとで、侵攻の遅れ自体はさして問題でなく、また市民は社会を破壊するための明確なターゲットになると言える。

 

 2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始した。2021年秋頃から、ウクライナ国境付近のロシア軍配備の増強をきっかけに始まったウクライナ危機を巡って、首脳外交までもが行われて事態の打開が模索されている中での衝撃的な攻撃開始であった。

 これについて、「プーチンは狂ったのか」「理解できない行動」との評価もみられるが、筆者は、「政治的目的を達成するための軍事行動」として捉えると、ウラジーミル・プーチン大統領なりの「合理的行動」として十分理解することができると考えている。軍事行動と政治的目的との連接性を見いだすことができるからだ。

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