企業を揺さぶる「繰り延べ税金資産」という爆弾

執筆者:富山創一朗2009年6月号

「危ない資産」を、日本企業は何年分も積み上げてきた。この時限爆弾は決算期末のたびに企業を襲うだろう。 四月後半から、企業の二〇〇九年三月期決算が相次いで発表された。期の前半は比較的業績好調な企業が多かったが、昨年秋以降の世界的な景気崩落で、年間では軒並み厳しい決算となった。中でもかつてないほどの巨額の損失を計上する企業が多かったのが目を引いた。 もちろん本業の業績が悪いということもある。だが実は、過去から抱えてきた爆弾が炸裂したことも大きかったのだ。その爆弾とは何か。「繰り延べ税金資産」。馴染みが薄い会計の勘定項目で、しかも専門的なため、新聞などでは余り詳しく解説されない。だが、この繰り延べ税金資産の取り崩しを余儀なくされたために多額の費用が発生、赤字が膨らんだケースが多いのである。 七千八百八十億円の赤字決算となった日立製作所にしても、そのうちの三千九百億円が税金資産の取り崩し分だ。しかも、その爆弾破裂がこの決算だけでは終わりそうにないところに怖さがある。なにせ、各社がこぞって、巨額の税金資産を積み上げている。一年前の〇八年三月期末で日立製作所六千百四十五億円、東芝四千三百四十三億円、三菱電機四千八十五億円といった具合だ。今回発表した決算で、各社とも取り崩したのは、その一部。すべてを処理したわけではないので、問題が先送りされた格好になっているのだ。

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