2022年も大晦日となった。フォーサイト編集部からは、各種の寄稿の打診や企画のお誘いをいただくが、学内シンクタンクROLESの組織運営や海外拠点形成にかかりきりで、反応できないことが多くて心苦しいところである。

   昨年はこの「中東通信」欄に、12月に一気に10本のまとめを寄稿した。これは1年の振り返りというよりは、その前の5年ほどに積み重なり顕在化していた中長期的な変化をまとめたものだった。今年も年末に、走り書きになってしまうが、この1年を回顧しておこう。

   この1年で、世界は、中東はどう変わったか。いうまでもなく、ロシア・ウクライナ戦争があり、それは中東地域と、中東の主要国に大きな影響を及ぼした。

   まず、ロシア・ウクライナ戦争により、中東が9・11事件とアフガニスタン戦争以来の約20年ぶりに、あるいは1991年の湾岸戦争以来の約30年ぶりに、国際社会の「危機の震源」の地位を「失った」。危機がなくなる、あるいは危機とみなされなくなることは、ひとまずは肯定的に捉えられることだろう。とはいえ、「危機の震源」であることを常態として、半ばそれによって政治的・経済的に成り立っている面もあった中東である。「危機の震源」とみなされなくなったことは、今後、深く大きい意味を持つだろう。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。