断食月ラマダンの終わりを告げるイード・アル=フィトルの日、集団礼拝に参加するムスリムの少女が風船を手にする[2022年5月2日、ジャカルタ](C)Reuters

[ジャカルタ発(ロイター)]世界最大のイスラム人口を有するインドネシアで昨年12月に成立した改正刑法は、婚前・婚外の性交渉を違法としたことで世界の耳目を集めたが、その成立過程ではイスラム系諸政党が道徳上の罪にさらに厳しい罰則を求めたようだ。

 226ページに及ぶ改正刑法は、評論家たちに市民の自由を脅かすものと指弾されるが、当局はインドネシアのアイデンティティを反映したと主張している。道徳律と称される項目は、そのほんの一部に過ぎない。

 法改正を監督する議会委員会のタウフィック・バサリ下院議員(ナスデム党)によれば、議会の多数派を占める世俗ナショナリスト系の諸政党は道徳に関連する項目の強化に反対したものの、“姦通の後援者”という烙印を押されかねないため妥協した。

 世界第3の民主主義国家であるインドネシアは伝統的に多元的で穏健なイスラム国家だが、1998年に独裁的なスハルト政権が崩壊すると、イスラム教の保守的な解釈が勢いを増した。新刑法は、植民地時代に押しつけられた旧法に代わるものとして数十年間に亘って練り上げられ、大統領や国家機関を侮辱することや、国是「パンチャシラ」(初代スカルノ大統領が打ち出した5原則)に反する見解を広めることを禁じる条項が含まれる。

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